お菓子屋を開業するまでの流れ【1,000万円使い切った現役店主が全公開】

開業・独立系
  1. はじめに
  2. お菓子屋開業までの全体ロードマップ
  3. ①コンセプトを決める
    1. 職人が陥る一番の落とし穴
  4. ②資金計画 – 私の場合は1,016万円
    1. 結論:全部使い切って、開業初日に運転資金がゼロでした
  5. ③物件探し – 家賃6万円・13坪の小さな店
    1. なぜ小さい店にしたのか
    2. 物件選びで見るべきポイント
  6. ④内装・外装工事 – 一番お金をかけたのは「外装」
    1. 一番お金をかけたのは外装
  7. ⑤設備 – ショウケースとオーブンで410万円
    1. ショウケースとオーブンは新品で正解だった
    2. 個人店で人気のプロ仕様ミキサー
  8. ⑥許可・届出
  9. ⑦仕入れと運転資金の現実
  10. ⑧オープン後の売上を全公開します
    1. オープン週の日別売上
    2. 月別売上
    3. 自転車操業から黒字化まで
  11. 【業界の裏側】お菓子屋のクリスマス商戦は7月から始まっている
    1. 9年目の現役店主が回している年間スケジュール
    2. なぜ7〜8月に飾りを発注するのか
      1. 業界の常識:装飾品は「製菓材料の卸業者」に直接注文する
    3. 9〜11月:焼き菓子をためておく理由
    4. 11月:予約受付とパンフレット作成
    5. 12月:フル稼働で生菓子製造
    6. これから開業する方へのアドバイス
  12. ⑨コロナ禍は、テイクアウトのお菓子屋にとってチャンスだった
  13. ⑩キャッシュレス対応とネット環境は開業時から導入すべき
    1. キャッシュレスを使うなら店舗用ネット環境は必須
  14. 9年やってきて、開業前に知っておきたかった一番のこと
  15. まとめ
  16. 🍰 おまけ:お菓子の豆知識
    1. ショートケーキは実は日本生まれ説がある

はじめに

マロン
マロン

どうも、9年目の現役ケーキ屋店主マロンです。今日は開業のリアルを全部見せます。

「いつかお菓子屋を開きたい」

そう思っている方は多いと思います。でも実際の開業って、いったいいくらかかるのか。何から始めればいいのか。本当にやっていけるのか。ネットで調べても、リアルな数字が出てこないんですよね。

この記事を書いている私マロンは、製菓専門学校を卒業後、4店舗で修業を積み、32歳でケーキ屋を開業。今年で9年目に入りました。

実際に1,016万円を使い切って開業し、初月の売上から年末のクリスマス商戦まで、すべての数字を公開します。

ネットでは絶対に出てこないリアルな数字を全部この記事に書きます。長くなりますが、開業を本気で考えている方は最後まで読んでみてください。

お菓子屋開業までの全体ロードマップ

まずは全体像から。

時期 やること
開業1〜2年前 コンセプト決め・資金計画
開業1年前 物件探し・資金調達
開業6ヶ月前 内装・外装工事・設備導入
開業3ヶ月前 許可申請・仕入れ先確保
開業1ヶ月前 開業届・SNS・試作・告知
開業日 オープン
開業3〜4ヶ月後 自転車操業を抜ける
開業半年後 経営が安定

①コンセプトを決める

開業準備で最初にやるべきことはこれです。

具体的に決めること:

  • どんなお菓子を売るのか
  • どんなお客さんに来てほしいのか
  • テイクアウトだけか、イートインもやるか
  • 価格帯はいくらにするか

参考までに、私のお店のコンセプトは:

  • 季節のタルトをメインに、焼き菓子・生菓子も扱う
  • テイクアウトのみ
  • 地元のお客さんが日常使いできる価格帯

これを最初に決めたので、物件選び・内装・設備・仕入れ、すべての判断がブレませんでした。

職人が陥る一番の落とし穴

ここで一つ、声を大にして言いたいことがあります。

職人は「自分が作りたいもの」を作りたがります。でも、売れるかどうかはお客さんが決めます。

私もそうでした。学校・修業時代に磨いてきた技術で「最高のものを作りたい」と思っていました。でも、お客さんが買うのは「自分が欲しいもの」です。技術と売れる商品は、別物。ニーズに合わせたものを作らないと売れません。これを開業前から意識できるかで、その後の経営が大きく変わります。

②資金計画 – 私の場合は1,016万円

ここからが本題です。私の実際の開業費用を全公開します。

費用項目 金額
物件取得費 36万円
内装・外装工事費 450万円
設備費 480万円
初期仕入れ 50万円
合計 1,016万円

資金の内訳:自己資金300万円+父からの借入700万円

結論:全部使い切って、開業初日に運転資金がゼロでした

これが今日の記事で一番伝えたいことです。

1,016万円すべて開業準備に使い切った結果、材料の仕入れを払うお金が手元に残っていませんでした。

オープン初日の売上で、ようやく次の仕入れ代を支払う。完全な自転車操業のスタートです。

これは絶対にやめてください。最低でも3〜6ヶ月分の運転資金を別で残しておくべきです。

私は無知だったので「開業資金=必要な準備費用すべて」だと思っていました。でも本当に必要なのは、「準備費用+数ヶ月の運転資金」です。

③物件探し – 家賃6万円・13坪の小さな店

私の物件のスペック:

  • 広さ:13坪(店舗4坪:厨房6坪)
  • 家賃:月6万円
  • 物件取得費:36万円
  • 居抜きではなくスケルトン

地方の小さなテイクアウト中心の店なので、これだけのサイズで十分でした。

なぜ小さい店にしたのか

「大きい店にした方が売上も伸びるのでは?」と思うかもしれません。でも、お菓子屋は固定費との戦いです。

家賃が10万、15万、20万と上がっていくと、毎月の損益分岐点もどんどん上がります。一度大きくしてしまうと、簡単には縮小できません。

最初は小さく始める。利益が出てから広げる。これが長く続ける一番のコツです。今9年経って、改めてそう思います。

物件選びで見るべきポイント

  • 客層に合った立地か
  • 厨房として使える広さがあるか
  • 排水・換気の設備条件
  • 家賃が想定売上の10〜15%以内に収まるか

私の家賃6万円は、月商150万円なら家賃比率4%。これは超優秀な数字です。

④内装・外装工事 – 一番お金をかけたのは「外装」

工事期間は約3ヶ月。費用は450万円でした。

一番お金をかけたのは外装

意外かもしれませんが、私は外装に一番お金をかけました。

理由は単純で、お菓子屋は「見た目で寄りたくなる店」じゃないと入ってもらえないからです。

地元のお客さんが日常使いするにしても、最初に「入ってみたい」と思ってもらうのは外観です。チラシよりも、SNSよりも、通りすがりの一目惚れが一番強い集客になります。

これは9年やってきて、本当に正解だったと思っています。

⑤設備 – ショウケースとオーブンで410万円

私が買った設備の中で、特に高額だったもの:

設備 金額 新品/中古
ショウケース 230万円 新品
オーブン 180万円 新品
その他 70万円 新品+中古
合計 480万円

ショウケースとオーブンは新品で正解だった

合計410万円。設備費の85%がこの2つで消えました。

「中古でも良かったのでは?」と聞かれることがあります。でも、ショウケースとオーブンは毎日酷使する商売道具です。9年使い続けていますが、今でも現役。長く使えるものは新品で買って正解でした。

逆に、作業台や小さな冷蔵庫は中古でも全然OKです。

個人店で人気のプロ仕様ミキサー

ミキサーは「これさえあれば一通りこなせる」という意味で、お菓子屋の基本設備です。個人店から本格製菓店まで幅広く使われているのがケンミックスのアイコー シェフPRO。日本のプロのパティシエにも愛用者が多く、私自身も修業時代に何台も触ってきた信頼感のある一台です。


業務用は高額なので、最初は中古から始めて、軌道に乗ったら買い替える流れも現実的です。

⑥許可・届出

お菓子屋を開業するには、以下の手続きが必要です。

  • 食品衛生責任者資格(1日講習で取得)
  • 飲食店営業許可(保健所、内装完成後に申請)
  • 開業届(税務署、開業から1ヶ月以内)

開業届の詳しい書き方・出し方は別記事で解説しています

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⑦仕入れと運転資金の現実

初期仕入れは50万円。これは最低限です。

そして冒頭でお伝えした通り、運転資金を残せずに開業日を迎えたのが私の最大の失敗でした。

仕入れ代を売上で払う自転車操業の状態は、3〜4ヶ月続きました。経営が本当に安定したと感じたのは、開業から半年後くらいです。

⑧オープン後の売上を全公開します

ここからが本記事のクライマックスです。私の店の開業初週から開業4ヶ月目までの売上を全公開します。

オープン週の日別売上

日数 売上 客数 客単価
1日目(オープン日) ¥224,400 156人 約¥1,438
2日目 ¥250,420 168人 約¥1,490
3日目 ¥166,200 114人 約¥1,458
4日目 ¥95,750 74人 約¥1,294
5日目 ¥68,700 54人 約¥1,272
6日目 ¥49,850 36人 約¥1,385
7日目 ¥72,280 56人 約¥1,290

オープン週末はご祝儀相場で22万、25万と売上が出ました。でも、平日の落ち着いた数字を見てください。6日目は約5万円まで落ちています。

これがリアルです。オープン当初は浮き沈みが激しいんです。

月別売上

期間 売上 客数
オープン月 ¥1,762,880 1,252人
2ヶ月目 ¥1,301,350 901人
3ヶ月目 ¥1,445,660 922人
4ヶ月目(クリスマス商戦) ¥2,071,430 1,091人

オープン月の176万円から、2ヶ月目で130万円まで落ちました。ご祝儀相場が終わると、こうなります。

そしてクリスマスのある月は207万円。お菓子屋はクリスマス月が一番稼げる月です。

自転車操業から黒字化まで

  • 1〜3ヶ月目:売上はあるが、運転資金がないので材料費は売上で払う自転車操業
  • 4ヶ月目以降:自転車操業を脱出
  • 6ヶ月目:経営が安定し始める

ここを乗り越えられるかが、最初の試練です。

【業界の裏側】お菓子屋のクリスマス商戦は7月から始まっている

記事の前半で、私の店の12月の売上が207万円だったとお伝えしました。お菓子屋・ケーキ屋にとって12月は1年で最も稼げる月です。

でも実は、クリスマス商戦の準備は7月から始まっています。これは業界に入ってみないとわからない事実です。

9年目の現役店主が回している年間スケジュール

当店のクリスマス商戦準備スケジュールを公開します。

時期 やること
7〜8月 クリスマス飾り・パッケージの発注
9〜11月 焼き菓子の作り置き・冷凍ストック
11月 予約受付スタート・パンフレット作成
12月 生菓子・ケーキの製造(フル稼働)

なぜ7〜8月に飾りを発注するのか

「気が早すぎでは?」と思うかもしれません。でも、これには理由があります。

クリスマス用の飾り・トッパー・パッケージは、人気商品ほど早く売り切れるからです。

業者の在庫には限りがあるので、夏のうちに発注しないと「サンタの飾りが手に入らない」「希望のリボンが完売」という事態になります。これを9年やってきて何度も見てきました。

業界の常識:装飾品は「製菓材料の卸業者」に直接注文する

意外と知られていませんが、プロのお菓子屋はクリスマス装飾品を楽天やAmazonでは買いません。普段から取引している製菓材料の卸業者に直接注文するのが業界の常識です。

理由はシンプルで:

  • 業務用のロット単位で安く仕入れられる
  • 毎年同じ業者なので新作カタログが届く
  • 個別配送ではなく材料と一緒に納品してもらえる

開業前から取引する製菓材料の卸業者を1〜2社確保しておくと、こうした季節商品の仕入れもスムーズです。これも開業準備で見落とされがちな重要ポイントです。

クリスマスは1年で最も売上が上がる月。飾り1つで売上が変わることを知っているお店ほど、早めに動きます。

9〜11月:焼き菓子をためておく理由

12月に入ると、生菓子・ホールケーキの製造で厨房はパンクします。

そのため、クッキー・パウンドケーキ・マドレーヌなどの焼き菓子は11月までに作り置き・冷凍しておきます。これをやらないと、12月中の通常商品が並ばなくなり、機会損失が発生します。

これも、開業前には絶対に教えてもらえない「業界の常識」です。

11月:予約受付とパンフレット作成

クリスマスケーキの予約は、11月から受付開始するのが業界標準です。

お客さんは早めに予約を入れたい方が多く、12月に入ってから受付を始めるとライバル店に流れます。

パンフレットは1ヶ月前から作成スタート。当店では撮影もパンフレット作成も自分たちで対応しています。外注すると数万円かかりますが、自前でやれば材料費+デザインソフト代だけで済みます。

12月:フル稼働で生菓子製造

ここまで準備しておけば、12月は集中してクリスマス商品(ホールケーキ・限定メニュー)の製造に集中できます。

逆に、準備せずに12月を迎えると「飾りがない」「予約が取れない」「通常商品が出せない」の三重苦になります。クリスマス商戦の成否は、7月の判断で決まると言っても過言ではありません。

これから開業する方へのアドバイス

開業初年度のクリスマスは、何もわからず迎えてしまうことが多いです。私もそうでした。

でも、この記事を読んだあなたは「7月から準備が始まる」「11月に予約スタート」「12月はフル稼働」という業界のリズムを知っています。

開業してから初めての12月を迎える前に、ぜひこのスケジュールを参考にしてください。年間売上の20〜30%がこの1ヶ月に集中するので、ここで失敗するか成功するかで、開業1年目の経営は大きく変わります。

⑨コロナ禍は、テイクアウトのお菓子屋にとってチャンスだった

開業から3年経った頃、コロナ禍が始まりました。多くの飲食店が苦しむ中、テイクアウト専門のお菓子屋には逆に追い風でした。

外食ができなくなった人たちが、「家で食べる楽しみ」を求めるようになったからです。当店の売上は、コロナ禍の方が伸びました。

業態によっては、ピンチがチャンスになる。これも開業を考える上で頭に入れておきたい話です。

⑩キャッシュレス対応とネット環境は開業時から導入すべき

最後にひとつ。キャッシュレス対応は開業のタイミングで絶対に入れてください。

うちの店は現在、売上の約6割がキャッシュレス決済です。現金だけにしていたら、6割を取りこぼしていた計算になります。

AirPAYなら一台でクレカ・交通系IC・QR決済すべてに対応できます。詳しくは9年使った正直レビュー記事を参照してください。

キャッシュレスを使うなら店舗用ネット環境は必須

意外と見落としがちなのが店舗のネット回線です。AirPAYなどキャッシュレス決済は通信ありきなので、安定したネット環境がないと決済そのものができません。SNSやEC運営にも必要です。

光回線は開通工事に1〜2ヶ月かかるため、開業の3ヶ月前には申し込みを済ませておくと安心です。スマホキャリアとセット割でお得になります。

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「物件は決まっていないけどネット環境はすぐ欲しい」「工事を待ちたくない」という方には、工事不要のモバイルWiMAXが便利です。届いた日から使えます。

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9年やってきて、開業前に知っておきたかった一番のこと

正直に書きます。

9年経営してきて、経営の大変さを心の底から知った今、もし開業前にこの全てを知っていたら、私は開業を躊躇していたかもしれません。

つまり、無知だったからこそ開業できたんです。

でも、それでも私は今、この道を選んで本当に良かったと思っています。職人として給料制で働き続けるより、自分の店を持つ方が、収入もやりがいも自由度も全部上です。頑張れば2人でも年収1,000万円以上は十分目指せます。

開業を考えている方へ。完璧な準備を待っていたら一生開業できません。ある程度学んだら、思い切って飛び込む勇気も大事です。

まとめ

長くなりましたが、私が9年間お菓子屋を経営してきて伝えたいことを全部書きました。

  • 最初は小さく始める(13坪・家賃6万でも全然やれる)
  • 資金は「準備費用+運転資金」で計画する
  • 見た目で寄りたくなる外装にお金をかける価値はある
  • 長く使う設備は新品で買うべき
  • オープン週のご祝儀売上に騙されない
  • 3〜4ヶ月の自転車操業を覚悟する
  • 半年で安定し始める
  • キャッシュレスは開業時から導入する

この記事が、これから開業を目指す方の参考になれば嬉しいです。

🍰 おまけ:お菓子の豆知識

最後まで読んでいただきありがとうございます。せっかくなので、お菓子屋にちなんだ豆知識をひとつ。

ショートケーキは実は日本生まれ説がある

クリスマスに食べるショートケーキ。実は、あの「いちごとふわふわスポンジと生クリーム」のショートケーキは日本生まれという説があります。

1922年(大正11年)、不二家の創業者・藤井林右衛門がアメリカ留学から帰国した際、現地のショートケーキ(ビスケット生地にいちごとクリームを挟むタイプ)を日本人向けにアレンジ。スポンジ生地に変えて発売したのが、今の日本式ショートケーキの原型と言われています。

つまり海外で「Short cake」と注文しても、日本のあれは出てきません。日本独自の文化、ある意味国民食です。

――以上、9年目のお菓子屋店主マロンがお届けしました。

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