はじめに

お菓子屋の1年って、想像と違うこと多いんですよ。9年でわかったリアル全公開。
「お菓子屋って1年中忙しいの?」「閑散期はどう乗り切ってる?」「開業するならいつがいい?」
これは開業を考える方からよく聞かれる質問です。
私マロンは製菓店を開業して9年目。1年12ヶ月、月ごとに売上の波があります。想像と違う月が繁忙期だったり、思ったよりキツい閑散期があったり。
この記事では、9年経営してわかった「お菓子屋の年間スケジュールのリアル」を全公開します。
結論:1年で稼げる月・稼げない月
先に結論を表でまとめます。
| 区分 | 月 | 特徴 |
|---|---|---|
| 🥇 繁忙期1位 | 3月 | 雛祭り・ホワイトデー・卒業・移動シーズン |
| 🥈 繁忙期2位 | 12月 | クリスマス |
| 🥉 繁忙期3位 | 2月 | バレンタイン |
| 閑散期 | 5月・6月・7月 | 梅雨と暑さで生菓子が売れない |
そして売上の波は、閑散期と繁忙期で約1.5倍の差があります。
「3月が1位」って意外じゃないですか?多くの方は「クリスマスが一番でしょ」と思うはず。でも違うんです。理由は後ほど詳しく解説します。
月別・お菓子屋のリアル年間カレンダー
1月から順番に、9年経営した私のお店のリアルを書いていきます。
1月:新年・成人式
年明けは「年末年始でお菓子は食べ飽きた」というお客さんが多く、売上は落ち着き気味。成人式関連の手土産需要が少しある程度。
2月:バレンタイン(繁忙期3位)
ここで最初のピークが来ます。「自分用チョコ」「友チョコ」「義理チョコ」「本命」と用途が多様化しているのが現代のバレンタイン。お菓子屋もチョコ系商品を強化する月です。
3月:年間最大の繁忙期🥇
マロン店では3月が一番忙しい月です。理由は4つ。
- 雛祭り(生菓子の需要)
- ホワイトデー(バレンタインのお返し)
- 卒業シーズン(お祝い・先生への贈り物)
- 異動・引越しシーズン(送別の品)
特に強いのが焼き菓子の「多口注文」。卒業や異動のお祝い・お礼で「焼き菓子の詰め合わせを10個」「20個」というオーダーが連日入ります。
生菓子も売れますが、保存が利く焼き菓子の需要が爆発するのが3月の特徴です。
4月:入学式関係
入学式・新生活のお祝いケーキ・手土産需要があり、まだ忙しさが残ります。3月の波が4月初旬まで続くイメージ。
5月:閑散期入り(ワースト3)
GW明けから一気に落ち着きます。「母の日」があっても、お菓子屋の売上を押し上げるほどではないのが現実。世間のイメージとはちょっと違うかもしれません。
6月:梅雨で閑散(ワースト2)
梅雨入りすると、お客さんの足が遠のきます。「雨の日は寄りたくない」心理がリアルに数字に出る月。父の日もありますが、これも売上の起爆剤にはなりません。
7月:暑くて生菓子が売れない(ワースト1)
お菓子屋にとって7月は一番厳しい月です。理由はシンプルで、気温が上がると生菓子が売れなくなるから。ケーキは「持ち帰り中に溶ける」イメージがあり、お客さんは購入を控えます。
8月:意外と忙しい例外月
「7月が閑散なら8月も?」と思いきや、ここは例外。夏休みで人が動くため、帰省土産・お盆の供物・夏祭り需要で意外と忙しくなります。
9月:食欲の秋
涼しくなり、ケーキ・スイーツの需要が戻ってきます。「食欲の秋」と言われる通り、お客さんがお菓子屋に戻ってくる月。
10月:ハロウィン
ハロウィンの定着で、限定商品を出す店も増えています。当店でも秋メニューを強化する時期です。
11月:特別なイベントはなし
正直、11月は特に大きな需要月はありません。12月のクリスマス商戦に向けて、飾りの最終確認・パンフレット作成・予約受付スタートなどの準備期間と捉えるのが当店の実態。数字的にも、12月の大波の前の「静かな月」になります。
12月:クリスマス商戦(繁忙期2位)🥈
言わずと知れた1年最大の華やかな月。ホールケーキの予約が殺到し、厨房はフル稼働。
ただし、ここに業界の罠があります。
12月はいちごの仕入れがプレミアム価格になるんです。クリスマスケーキ需要で全国的にいちごの価格が跳ね上がり、原価が膨らみます。
つまり、売上は派手でも、利益率で見ると意外と薄い。「派手な売上 ≠ 高い利益」というのが業界のリアル。年によっては「3月の焼き菓子大量受注の方が手元に残った」という店も少なくありません。
これも、個人店であえてクリスマスを1位にしない理由のひとつです。
なぜ「3月」が1位なのか?マロン店の事情
ここからが業界の深い話です。
多くの人は「お菓子屋=12月が一番」と思っています。事実、それは多くの店で正解です。
でも私の店では3月の方が忙しい。なぜか?
答え:「個人店で一人で製造しているから」
クリスマスは生菓子(特にホールケーキ)の大量受注がメイン。1日に何十台ものケーキを作るには、製造スタッフが複数いないと回りません。
ある程度人数がいる店なら、クリスマスがダントツの繁忙期になるでしょう。
一方で個人店・一人製造の場合、クリスマスは生産能力の上限にぶつかります。これ以上は物理的に作れない。だからクリスマスは「目一杯」だけど「爆発」しません。
逆に3月の焼き菓子多口注文は事前に作り置きできるため、一人製造でも数を捌けます。雛祭り・卒業・異動と需要が分散しているので、ピーク日が固まりすぎない。
つまり、店の規模・体制によって、繁忙期1位は変わるんです。
| 店の規模 | 繁忙期1位 |
|---|---|
| 個人店・一人製造 | 3月(焼き菓子需要) |
| 複数スタッフ・大規模店 | 12月(クリスマスホールケーキ需要) |
これは開業を考えている方が、自分の店の規模を決めるときの重要な判断材料になります。
閑散期(5・6・7月)の生き残り戦略
「3ヶ月も売上が落ちるのキツくない?」と思った方、その通りです。だから対策が必要です。
私が9年やってきた閑散期対策:
①夏向け商品にシフト
冷たいデザート・ゼリー・ムース・アイス系の焼き菓子など、暑くても売れる商品を展開。
②ギフトに振る
5月「母の日」、6月「父の日」「お中元準備」、7月「お中元」と、贈答需要は意外と続いている。「自家用ケーキ」から「ギフト焼き菓子」に売れ筋を切り替える。
③イベント・コラボに動く
閑散期は時間に余裕ができるので、地元イベント・ポップアップ・カフェコラボなどに積極的に出る。新しいお客さんに知ってもらうチャンス。
④繁忙期の準備
3月・12月の繁忙期準備をこの時期に進める。夏のうちにクリスマス用の飾りを発注(人気品は売り切れる)など。
「閑散期は休む時間」ではなく「次の繁忙期の仕込み時間」と捉えるのが正解です。
これから開業するならベストな月は?
9年経営した今、もし「これから開業する人にベストな月は?」と聞かれたら、「繁忙期のちょっと前」と答えます。
なぜ「ちょっと前」が最適なのか
開業したら、すぐに様々な支払いが押し寄せます。
- 設備費の最終支払い
- 家賃・光熱費
- 仕入れ代
- 当面の運転資金
つまり「早く売上を立てる」ことが何より大事。そのために、繁忙期に向けて周知期間を確保しつつ、繁忙期で一気に売上を回収するのがベスト。
具体的には、9月または10月オープンがおすすめです。
| 月 | メリット |
|---|---|
| 9月オープン | 食欲の秋→10月→11月→12月クリスマスで売上ピークまで3ヶ月で周知が完成 |
| 10月オープン | オープン直後の追い風+秋商戦→クリスマス、2ヶ月後に最初の大波 |
私自身も9月開業でした。今振り返ると、これは戦略的に正解だったと思っています。
避けたい開業月
逆に5月・6月・7月オープンは避けたいタイミング。閑散期に開業すると、ご祝儀相場が出にくく、売上が立ちにくいまま支払いが先行します。これは資金繰り的にかなりキツい。
開業の月選びは、戦略的に決めましょう。
まとめ
- 繁忙期1位は意外にも3月(雛祭り・ホワイトデー・卒業・異動)
- 12月クリスマスは2位(個人店の場合)、しかもいちごプレミアム価格で利益率は薄め
- 閑散期は5・6・7月(梅雨と暑さで生菓子が売れない)
- 売上の波は閑散期と繁忙期で約1.5倍
- 店の規模で繁忙期1位は変わる(個人店3月/大規模店12月)
- これから開業するなら9月か10月オープンがおすすめ
🍰 おまけ:お菓子の豆知識
最後まで読んでいただきありがとうございます。せっかくなので、季節とお菓子に関する豆知識をひとつ。
いちごの本当の旬は「冬」
クリスマスケーキに欠かせないいちご。実はいちごの本当の旬は12月〜5月の冬〜春です。
「いちごは初夏のフルーツ」というイメージがありますが、現代の流通ではクリスマス需要に合わせてピークが冬になるよう品種改良・栽培管理が進んでいます。12月のクリスマス商戦に大量のいちごが店頭に並ぶのはこのためです。
お菓子屋にとっていちごは、「冬の主役」であり「夏は出番が減る」食材なんです。逆に7月の閑散期はいちごの流通も減るため、生菓子のラインナップも変わります。季節と素材は、こんなところでも繋がっています。
――以上、9年目のお菓子屋店主マロンがお届けしました。


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